▼『魔法先生ネギま!』(赤松健・作)は週刊少年マガジンで2003年から連載されている漫画
作品でアニメ化・実写化もされている。
▼物語は、魔法使いである10才の少年ネギ・スプリングフィールドが修行のためにウェールズ
の魔法学校を卒業後日本に派遣され、中学校教師として教鞭をとる、という設定。
▼ここでなぜウェールズなのかというのは、おそらくハリー・ポッターシリーズを踏まえて魔
法の本場であるイギリスの中のより魔法にふさわしい地として選ばれた可能性を信じたい。
▼ネギという名前は日本語の「ねぎ」ではないとされているものの、ウェールズのシンボルが
ネギ(または水仙)となっていることから、両者の関連性を連想することは避けられない。
が、作者にその知識があったかどうかは疑問である。
▼魔法学校のあるウェールズの場面には毎回「同じ遠景」が使用され、その絵はおそらく資料
写真を加工したものと見られる。が、非常に遺憾なことに、その資料写真は明らかにウェール
ズのものではなく、スイスの有名観光地のものである可能性が高い。
▼人里離れた自然美豊かな土地、という前提で、山々に囲まれた村の全景と湖の点在する風景
がイメージに合致したと見られるが、山の形状、村の建物の配置など、ウェールズの特徴とは
大きく外れている。
▼単行本20巻においてネギとその生徒達がウェールズを訪問するエピソードがあるが、この時
初めて、魔法学校があるネギの故郷がウェールズのペンブルック州であることが判明する。
しかしウェールズ南部がどこもそうであるようにこの一帯はおおむね平坦な地形で高い山地は
存在せず、ペンブルック州のもっとも標高の高い地点でも536メートルしかない。場面として
描かれているような高い山々に囲まれる場所を求めるなら、やはりウェールズ北部のスノード
ニア地方に行くしかないと考えられるのだが。
▼そこをおしてあえてペンブルック州にこだわったのは、ストーンヘンジに使用された石材が
ここのプレセリ丘陵 Preseli Hills から運ばれたものだという点にこだわったと推察できる
が、作中に出てくるメンヒルは実在するものではなく、現在のストーンヘンジの過去の姿の想
像図を元にしたものだと考えられる。なおプレセリ丘陵には小規模なものなら先史時代の遺跡
が点在している。
▼ペンブルック州 Pembrokeshire のデータ: 面積・1,590 km2、人口・117,300人、ウェー
ルズ語話者の割合・29.4%、州都・ハヴァーフォードウェスト Haverfordwest 。
犬種のウェルシュ・コーギー・ペンブルックの故郷。なお、「ペンブローク」と書かれること
が多いがこれは正しい発音ではない。ウェールズ語では Penfro と書くことからもともとは
「ペンブロ」であることがわかる。ちなみに地元ではこの犬はほとんどいない。
▼最後にペンブルック州の風景が見られるフォトギャラリーと Webcam をどうぞ。
BBCフォトギャラリー Pont Abraham J49
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