THE ENGLISHMAN WHO WENT UP A HILL
BUT CAME DOWN A MOUNTAIN
1917年、南ウェールズの小さな村に政府の測量技師が山の測量
にやってきた。高さが1000フィートに満たなければ山とみなさ
れず地図にも載らないと聞いて村人たちは色をなす。そして結
果は…あと 16 フィートの差で届かず。なんとかならないか
と、村人たちはあれこれ策を弄して技師たちを引き止めにかか
るのだが…。

のどかな土地柄で繰り広げられるゆる〜い騒動。コメディ調に
話は進み、恋模様も織り交ぜながら、ついには胸を打つクライ
マックスに突入し、心暖まる結末を迎える。

「私」が祖父から聞いた実話が元になっていると語られている
が実はこの部分も含めて監督の創作である。モデルとなった山
は実在するものの、この物語自体は実話ではない
原題は「丘に登って山から下りてきたイングランド人」。

 監督・脚本:クリストファー・モンガー
 出演:ヒュー・グラント、コーム・ミーニー、タラ・フィッ
  ツジェラルド、ケネス・グリフィス、イアン・ハート他
 1995 年日本公開











 なぜ村人はそこまでむきになったのか?

イングランドから入って最初の山だというのが村人の自慢でもあるフュノン・ガルウ Ffynnon Garw は、そ こにあるのが当然の、彼らの日常の一部である。それが地図から消えるかもしれないと聞かされて、自分の 体にいきなり穴が開くようなショックを村人たちは受ける。
学のある老牧師でさえ「イングランド人はいつも我々から何かを奪うためにやってくる」という漠然とした 不安にそれを置き換える。当たり前に山がそこに存在することと同じくらいに、彼らの中のイングランドに 対する不信感は当たり前に存在する。それは理屈ではなく、素朴な暮らしをする彼らにとっての日常であり 目の前の現実なのだ。
英語の名前を押し付けられたために苗字の種類が極端に少なく同姓の者だらけであること、戦争に男たちを 取られて村は年寄りと女と戦争で心と体を傷つけられた男だけという状況。それらは貧しさとか不便さ以上 にプライドへの介入という形を取って彼らの生活のバックグラウンドに存在している。
権威はいつも国境の向こうからやってきて彼らの暮らしを圧迫する。そんな想いがこの測量騒動に一気に火 をつけたとも言えるだろう。
イングランドから来た二人の測量技師は当人たちにそのつもりがなくても、ここに来た時点で、そしてフュ ノン・ガルウの名が地図から消えると宣告する者として、村人たちの価値観からは対決すべき存在である が、その立場は騒動を通してゆっくりと変わり始める。
そしてタイトルの「丘に登って山から下りてきたイングランド人」。これはこの事件の顛末を一言で表わし ていると同時に主人公アンソンが後に得た「名前」なのである。彼が当初の対立する存在から彼らに受け入 れられる立場に変わったそのことを表わしている。
村人たちの天真爛漫な反逆心を通して、この物語はユーモラスなドタバタにしんみりし、つらい現実を笑っ て見守る。その二重構造があってこそ、この映画を楽しめるのかもしれない。

 そして山はどこへ…

事件の舞台となった山は監督の出身地 Tuff's Well(ウェールズ語名: Ffynnon Taf)にある Garth Hill がモデルである。英語では Garth Mountain とも言い、ウェールズ語ではMynydd y Garth。
映画および原作のラストでは、この事件の年から5年後に地図に1002フィートと記載されてしっかりと 「山」のままであることを確認した村人たちが山に登って記念撮影をして祝ったと書かれている。
現実の Garth Hill の標高は 1007 フィートでもちろん山である。

ただしここはあくまでも監督の着想の元になった山であって、あの出来事自体は事実ではない。
映画が公開された当初は実話と信じてやって来る観光客も増えたため、町はここを荒らさないようにという 注意書きを用意することとなった。実はこの山、青銅器時代の貴重な史跡なのである。



 ひとつ隣の Bridgnorth 駅
 ロケ地

ということで監督は故郷の Tuff's Well でロケをしたかっただろうが、時代が変 わった今は首都 Cardiff の近郊としてすっかり町になっているためとても無理と いうことで代わりの場所を見つけることになった。

結局もっとウェールズの北のほうの Powys 州 Llanrhaeadr-Ym-Mochnant(スラナ イードリム・モハナン)村にある Mynydd-y-Gym 山でロケは行なわれた。村人役 の多くが現地の人たちによって演じられている。
他に、鉄道のシーンはイングランドの保存鉄道 Severn Valley 鉄道で撮られた。 あと少しでウェールズという国境近くなので、風景的にはOKだったのだろう。 終点 Bridgnorth の一つ手前の Hampton Loade 駅が使われた。

上の三角がロケ地、下が現地
注・タイトル横の写真は映画とは無関係。Talyllyn 渓谷の風景




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